
遂にシンガンの新曲が来ました。『knocking' the next-door』。人呼んでドアドン。
正直、今まで抱いていたクロウという男のイメージを根底から覆されました。
とっても良い意味で、です。
『TSUBASA』『シンクリズム』『New World Order』この3曲から導いた、私なりのクロウ像は分かりにくくはあるでしょうが、SS「STING」にしたためたとおり。
クロウとは、自意識で武装した男。自分の感性を至上と捉え、それを守るために他者を拒絶する。でも、どこまでの自分の内側へ潜っていきたいのに、どこかで人とのつながりを求めてしまうジレンマのはりねずみ。
『next-door』は今までの曲とはがらっと雰囲気が違う。
バラードパートに重きを置かれてるとか、なんか言葉遣いが優しいとか、色々と新しい要素が多いけど、私が一番クロウさん変わったなと思ったのは「聞く人を歌に含ませた」ということ。
今までの3曲には他人が存在しない。『TSUBASA』では「君」、『New World Order』では「おまえ」という他人が歌詞に出てくるけど、どちらもどうにも現実感がない二人称。この歌の中にだけ存在する人物(クロウさんの想像上の人物)なんだろうな、という印象。
シンガンの曲って(STINGでも少し触れたけど)オーディエンスに共感を求めてないというか、聞く人に反応を期待してない。(単に私が曲を聴いた感想だから曖昧な言葉になるけど)ただクロウの持つ世界観や主義主張をそのまま歌にした、独り言のような印象だった。現実感がない異世界のお話、みたいな(だからこそ、その異世界に惚れ込んだ人を虜にしてきたんだろう)
でも、歌詞を聞き取れる限り『next-door』には二人称の言葉こそ出ないけど、常に誰かに語りかける風で、内容も夢を追う人へのメッセージ性が強い(しかも、その「誰か」とはこの歌を聴いている実在の人間、オーディエンスだ)単なる「俺はこう思う」からもう一歩進んで、「俺はこう思う。だから、お前らのこと応援してる。がんばれ。」くらいに変わった。
人を震わせる歌から、人を奮わせる歌になった。と思う。
クロウさん、おおらかになったんだなー。
今まで自分の夢さえ叶えられればそれで良いと思ってたのが、自分と同じように夢を追う人へ祈りを捧げるようになった。大げさに言うならこの人は「人のために歌う」ことを覚えた。
「一人きりの勇気」とあくまで自分本位であることは捨ててないけど、「負けない心、誰だって持ってんだよ」「見失わないで、次のステージへ」と今までのクロウさんなら考えられない驚くほど素直なエールの言葉。
正直クロウさんの人生って袋小路だと思ってた。自意識に耽溺することを『シンクリズム』で至高としながらも、『New World Order』では他人に救われることを望んでしまう。あまりの無いものねだりに、この人は一生苦しむんだと思ってた。
それが一転、人を支えることを良しとするようになった。内へ内へ向かっていた自意識を外へ向けられるようになった。
なんでこんな変化があったのかという話だけど、色々考えた結果シアンとの出会いが大きかったんじゃないかなって思う。
誰かを支えたいと思わせる出来事がクロウさんにあった、だからこういう歌を書くようになった。とすれば一番可能性が高いのは、クロウの傍にいて、同じように途方もない夢を追っかけてるシアン。自分より後ろを歩く後輩だから、クロウからエールを送るのも納得(…って妄想するのはクロシア好きだから?)
妹に曲を聴かせると、「軽くなった気がする。ひきずりすぎて、擦り減ったかな?」というFFACのクラウドの名台詞を話題にあげた。なるほどと思った。
自分の針に絶対の自信があったはりねずみが、ひょんなことからその針で大切な人を傷つけて針を捨てたくなる。でも、針がないと生きていけないから泣きながらひきずる。結果、針は擦り減って丸くなり、はりねずみはその優しい針を奮い立たせ、後を追う者の勇気にする。
針は弱くなったけど、心は強くなったねクロウさん。というお話。
とゆー訳で、新しいクロウさん年表ができました。今んとこ、こんな設定。
『TSUBASA』
バンド結成前。題のとおり羽ばたく歌。
クロウが学生時代から作り始め、メンバーが手直ししたシンガン代表曲。
厨二病スメルが最も強いが、「この世を変えろ」という若々しい覚悟とエネルギーに満ちている。若人らしい勇敢さと無謀さを背負って、自身の夢を叶えるべくMIDICITYの荒波へ身を投じた。そんな頃のクロウさん。
『シンクリズム』
インディーズ時代。自意識に潜る歌。恐らく最もクロウという男の特性が活きている。
徹頭徹尾「自己への没入」が歌われている。シンガンクリムゾンズを結成し、戦うために勝つためにと自分の最大の武器(自意識)に縋り付いている。それを「シンクリズム」、シンガンクリムゾンズの主義(イズム)だと信じて疑わなかった。そんな頃のクロウ。
『New World Order』
メジャーデビュー直前。救済を求める歌。
有栖川社長にスカウトされメジャーデビューを決心するが、反対するメンバーと衝突。あわや解散の危機を迎える(公式エピソードでは1曲挟んで仲直りであるが、ここは数週間の間があったとする。じゃなきゃ話が持たないでしょう…)
結局、メンバーを納得させデビューするが、自分本位を貫くこととバンドであり続けることの矛盾と限界に気付いてしまう。自分の夢のことだけ考えていればよかったはずなのに、メンバーへの執着、罪悪感、色んなものが見えてきてしまった。そんな頃のクロウ。
長期休歌
『New World Order』での葛藤が、じくじくと尾を引いている。メジャーデビューして順調に高まる人気とは裏腹に、歌が書けなくなってしまう。歌を作ること(自分と向き合うこと)に恐怖心を抱いている。
そんな中、有栖川事務所でプラマジが唐突にデビュー。まだド素人のシアンのギターの先生としてクロウが付けられる(スランプ中だったクロウの気分転換に社長が気を利かせた。もちろん事務所がギター講師を雇えるお金がないというのが理由の9割だけど)
自分と同じ夢を持つ少女との交流の中で、初心に立ち返ったり、メンバーの本音に触れたり、なんかこうジーン…とくる話がたくさんあったんだと思う。
『knocking' the next-door』
満を持して、メジャーデビュー後の初めての新曲。友を奮い立たせる歌。
シアンとの交流、他バンドとの対バンを通して一皮も二皮も剥けた。今までの刺々しさは弱まり、素直なメッセージを込められるおおらかさを装備。
インディーズ時代からの家畜の一部には「歌詞がチープになった」「メジャーになってから大衆ウケ狙ってる」など冷たい意見もあったが、この曲からシンガンに入信する家畜も多く、なによりメンバーからのウケがめちゃくちゃいい。クロウも珍しく優しげな笑顔で歌い上げる。
ちなみに男にはちとキツい高音パートが続くので、久しぶりにシアンとめちゃくちゃボイトレした。
そして、真紅色の伝説は続く…!
(クロウさんって、私の中でどうにも難しいキャラで。BLでも問題なく好きなんだけど、それをメインにするほど好きじゃなくて。じゃあ単体で好きかというと、シンガンに留まらず他キャラと絡ませる方が大好きで。)
(新曲聞いてわかったのは、私はクロウさんが主人公らしくいる、ってのが大好きなんだってこと。)
(クロウさんとシアンは理想的な男主人公と女主人公のW主人公で、こいつらが色んな人と出会ったり悩んだり挫折したり喧嘩したり立ち直ったり仲直りしたりするのが見たいんだと思う。)
(だから、クロウさんもアニメで主人公にしてあげてーーーー!)
※追記
妹から「ひとにぎりの勇気」じゃね?ってツッコミをいれられました。うるさいがんばれ。