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 純愛ist(更新停止)

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お世話になった人にはちゃんと挨拶しなさいってとーどーさんがゆってた

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お世話になった人にはちゃんと挨拶しなさいってとーどーさんがゆってた



 描きながら、真波くんてライバル筆頭格でありながら(坂道・今泉・鳴子全員と因縁のある御堂筋に比べて)総北の面子と面識も縁故も全くないんだよね。誰も知らないところで坂道くんと友達になってた真波に、やっぱ今泉&鳴子はちょっとは不信感があるんだろーか(坂道くんは出会った経緯とかちゃんと話してるだろうけど)
 これで手嶋さんとも縁ができたので、ちょっとだけ総北に馴染めるようになってほしい。


 昨日からの続き。39巻、1日目山岳リザルトまで。
 IH1日目の山岳賞はいつも何度でもドラマチック。手嶋から笑顔が消えたら本気の合図。真波から笑顔が浮かんだら本気の合図。走りながら死にそうと思う男と、走りながら生きてると思う男。まさかの二人が戦うことになってしまった(この展開は知ってたけど)
 対決開始直後から早々に本気も本気だが、もう無理だ限界だと言いながら根性が持続するのが手嶋主将の長所(彼の人生においても同じ)。相手が真波なんて「一瞬で死ぬ」か「ゆっくり死ぬ」かぐらいしか選べる道がないが、なぜ天はいつも手嶋に試練ばかり与えるのか。しかし、(敵の思惑とはいえ)2年連続1日目に最下位になってしまう小野田くんも中々に中々。今年は落車しなかったから良しとしよう。

 この登りを通して、手嶋純太という男のロードレースに対する姿勢を段階的に掘り下げていった話だったかなと思う。辛くて死にそうでなんで俺走ってるんだろって「辛い」の序盤。辛くても一歩一歩の頑張りを積み上げて食い下がっていく「努力」の中盤。なぜ辛くても努力するのかというと、ただ勝利を求めてるからという「勝ちたい」の終盤。じゃあなぜ勝ちたいのかというと、「自転車が好き」ってただそれだけ。いろはにほへと…と、手嶋の人間性を追ういろは坂だった。
 悪役として登場して、ヒネた性格の策士で、足以上に口がよく回って、嫉妬心も劣等感も人一倍で、相棒共々勝利への渇望にドロドロに塗れた野良犬のような男。以前より穏やかになったし実力もついてきたけど、「才能なき者が『勝利』の二文字を手に入れる」、この執念だけはブレたことが片時もない。勝ちたいからこそボロボロになるまで努力する、勝ちたいからこそ頭使って口使ってカッコ悪い戦い方でも戦い続ける。
 それこそが手嶋純太!と読み手が思っているからこそこの最後の答えはズルい。その勝利への執着の根底にあるのは、ただ「好き」ってそれだけ。ここが手嶋純太という人間性の着地点だった。薄汚く、カッコ悪く、飢えに飢えた手嶋の執心の芯は、矜持高く、清廉で高潔な、ロードレースそのものへの純心。ちょっと意味が違うが『泥中の蓮』だ。
 最後の最後に手嶋が読み手に明かしてくれた、「純太」という名前を戴くに相応しい純粋さ。2年合宿、峰ヶ山、県予選、3年合宿……、5年にも渡って積み上げてきた手嶋の戦い、手嶋のイメージがすべて伏線だったように思える、あまりに劇的な終着点だった。なんだこれ泣いていいのか。

 高潔と言っても、勝ち負けよりフェアプレーを優先したっていう単なる美談じゃないだろう。勝敗をそんな軽く扱うような男じゃない。ましてや初めて手にしようとした、涙まで流してた目前の勝利。手嶋はこの負けを一生忘れないだろうし、ジクジクと引き摺り続けるかもしれない。
 当たり前のことをきちんとやる人と杉元は言っていたけど、「メカトラの相手を待つ」ということは手嶋にとって、少なくとも手嶋の考えるロードレースにとって当たり前のことだったんだろう。だから、ここで待たずに勝つのは手嶋が死に物狂いで求めてる「ロードレースの勝利」じゃなくなってしまう。手嶋は『ロードレース』が好きだから、『ロードレース』で勝ちたかった。あのまま勝っても誰も文句は言わないはずだが、それは自分の根底への否定で、今までの自転車人生の否定で、ロードレースへの否定。
 とは言っても、当たり前だからとすんなり受け入れられるはずもないだろう状況。紛うことなき苦渋の決断。それでも、手嶋は歯あ食いしばって「当たり前」をきちんとやった。当たり前じゃない「特別」なことができる人間ばかりのIH、果たしてその中でこの「当たり前」をし通せる人間がどれだけいたろうか。だからこの人は平凡でも他者に尊敬されるんだろう。人に羨まれはしないが、人に敬まれる男だ(最初は後ろ指さしてた観客がいつの間にか手嶋を応援してしまっているのも良かった。「頑張れば期待される」がきちんとできてるよ純太)。杉元のセリフはある意味伏線にして予言だった。

 有言実行の男・手嶋純太、坂道に言った「悩んだら全部考え尽くして、最初に思いついたことをやれ」ってことを実行したのかもしれない。だとしたら、振り向いてしまった瞬間、まず最初に思ったことが「勝てる」ではなく「止まらなきゃ」だったであろうことがもう、この人の自転車人生の全てで、この人がなぜ自転車に乗るのかの答え全てだった。
 「俺は強い」の福富主将と「俺は弱い」の手嶋主将、広島IHを思えば、信念より勝利を欲した福富と、勝利を捨てても信念に殉じた手嶋ってことで対比になるのかもしれないけど、あの事件をあまりいじくると福ちゃんが可哀想なのでこれぐらいにしとく。まあ、現在の純太は少なくとも2年の福富さんより高潔で誇り高い男だということだ。ほんと大丈夫か手嶋?おまえこの後ちゃんと出番ある?これで弱虫ペダル手嶋純太編・最終回になっちゃう?

 しかし、全開の真波に秒差負けとかほんとどこまで強くなっちゃうの。というか、1日目から死にそうだけど平気か。はじめさんは死亡フラグ立てるけど、あんたは3日目ぐらいでリアルに死んじゃうんじゃないのか。ちゃんと休めー。
 ちなみに展開以外に純粋に関心したのは、前触れもなく唐突につっこまれた「平田の姉ちゃん」の話題。思考力を失った人間の思考回路の吹き飛び方を表現しつつ、僕等にも身に覚えのある感覚を想起させてきて「巧い!!!」と膝を叩いた。お見事。


 そして、忘れちゃダメなのは真波くん。
 去年のIHが終わってから新生総北がメインに話を進んでたけど、バックストーリーとして語られる真波の物語もいちいち胸に沁みてた(感想まとめてなかったけど)。去年のIHで負けて、自分のせいだと塞ぎ込んで、約束のボトルを捨てて、東堂さんに自由に走れってまた言われて、他の先輩からも肩を押されて、また坂道くんにボトルを渡せるようになって……、その1年にも及んだ真波の苦悩がこの山岳賞――去年東堂さんが死闘の果てに手にしたIH1日目山岳賞を勝ち取ることでやっと雪ぐことができた。真波にとってはそういう戦いだったんじゃないかな。

 最後の最後に思い出すのが東堂さんの言葉って時点でもう泣けて泣けてしょうがないのだが、「はねのける」と真波が言っているのは13という数字の不吉さではなく、去年のIHから真波の中に残り続ける未練とか後悔とかネガティブなイメージだろう。東堂さんは逆向きにして好転させてあげようとしてたが(ここらへんの気遣いと古風さが流石の東堂さん)、あえてそのネガティブを背負ったまま勝つことで乗り越えようとしているのは本当に芯が強い子で、東堂さんでなくても泣けてくる。東堂さん、あんたの教え子、すごくいい育ち方してるよ……!
 13の不吉はチェーンが外れるという最悪の形で降りかかったけども、それを乗り越えられたのは手嶋さんのおかげ、さらに言えば真波が「自転車に一生懸命だった」おかげ。勝負事が好きな真波だけど、勝敗に固執すると意外とロクな目に遭わない。「チームのことは忘れて自由に走れ」と東堂さんに言われた通り、最終的に真波を救うのは自転車を純粋に楽しむ心と、どんな時も「もったいない」と言って全力を惜しまない率直さ。ただ全力を尽くすのみだった手嶋との最後の戦いは去年の坂道くんとの戦いを彷彿とさせて、真波も原点回帰ができたのかなと思う。
 去年の東堂先輩を彷彿とさせる両手を広げて空を仰ぐ勝利ポーズ。東堂さんはあれで巻ちゃんとの決着をつけたが、真波はこれで自分の中の「負け」に決着をつけられたんだろう。初めて見せる勝利の咆吼。去年の2日目福富さんを彷彿とさせる過去の清算。本当におめでとうだ。

 ギリギリの勝負にしか価値を見出せない。苦痛を感じることで生を実感する。自分を試し続け自分を出し切ることにこだわる真波の生き方は危なっかしい。
 そんな真波が、東堂さんから「自由であること」を教えられ、坂道くんから「一緒に走る喜び」を教えられ、手嶋さんから「勝負以前に自転車が好き」ってことを教えられ、例え命を削るような勝負でなくとも、ただ誰かと一緒に自転車をこいでるだけでも「オレ、生きてる!」って思えるように変わっていくのかなー、と思うと本当に彼はいつまでも見守っていたい天使である。エンジェル。
 それとは別に、去年IHでマトモに戦った相手が友達である坂道とヒールである御堂筋しかいなかったので、真波がきちんと「敵役」として立ちはだかるのは初めて。その圧倒的実力、格下に対する興味の無さ、鋭い眼光に余裕の態度、堂々たる強敵ぶりがカッコいい。
 去年IHは箱学の秘密兵器として終盤(しかも同じく強キャラ相手に)しか戦えなかったので、強キャラと銘打たれながらイマイチ強さのレベルが分かりにくかったのが残念だったんだけど(東堂先輩もそゆとこあるけどね)、絶望感すら相手に与える無双ぶりをやっと見せてくれたので安堵。坂道くん以外の人間には、みんな真波はこう見えてるんだろなあ。

 序盤はニコニコしながらも手嶋に一切興味ないあたりは、悪役感とか性格悪いとか云々より「真波らしいなあ」って感じで微笑ましかった。スプリンターと違って、クライマーの相手は敵選手だけでなく道そのもの。特に山頂を獲ることを喜びとしてる真波が、他の選手に目もくれないのは実に「らしい」(その辺最初から真波の興味を引いた坂道くんってスゲエな)。
 「クライマーとは孤独」とは巻島さんも東堂さんも言ってきたことで、優秀なクライマーであればあるほどその孤独を埋める相手をなんとなく探してる。山頂を一番に獲る喜びの裏で、一人で山頂に向かうのは少し寂しいという真波の本音は昨年IHの通り。だから、真波にとって自分についてこれる人がいるのは一番に嬉しいことで、手嶋さんがギリギリでも自分についてきてくれたことは「興味が沸いた」と簡単に言うけど、内心はかなり嬉しいんだろうなあとこちらも微笑ましかった。
 健闘したとはいえ手嶋さんとは数段の実力差があるので、東堂さんみたいに恩師って訳でなく、坂道くんみたくライバルって訳でなく、言ってしまえば単なる自転車友達って間柄になんのかなと思う。自転車が好きって共通点でつながった戦いであった訳だし。真波が坂道くん以外の総北キャラと会話すること自体ほとんどないことだし、是非今後も会話する機会がほしい。くれ。

 他校の年上と話すのが初めてだからか、ついさっきまで生意気な口叩いてたのを気まずく思ったのか、手嶋さんに対するちょっと緊張したようなでも敬意をいっぱいに込めた敬語の使い方が可愛い。その後、こっそり総北テントに現れては手嶋さんにぺこぺこしてく真波とかを想像すると身悶える。東堂さんには「ちょっと惚れそう!」と公式ベタ惚れだが、手嶋にも胸キュンぐらいはいったかもしれない。真波くんと年上の組合せは、ほんといい。エンジェル。

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